ワーキングメモリと連携して働く主な脳部位 | 記憶、感情、数学、言語の能力に関係
情報処理能力に関係するワーキングメモリは、主に「記憶」「感情」「数学」「言葉」に関する脳部位と連携して働いています。
なので、ワーキングメモリを強く鍛えれば、「記憶」「感情」「数学」「言葉」の脳部位にも影響を与えて、脳全体の働きが向上します。
ワーキングメモリの基盤「前頭前皮質(前頭前野)」
ワーキングメモリの基盤となる脳部位は「前頭前皮質(前頭前野)」という部分で、ちょうど額の裏側にある前頭葉の前側にある脳部位です。
前頭前皮質は、他の脳部位から送られてきた情報を処理する実行機能をしており、思考してワーキングメモリを活用しているときに前頭前皮質が活用しています。
前頭前皮質が持つ実行機能には、次のようなものがあります。
- 対立する考えを区別する能力
- 現在の行動によってどのような未来の結果が生じるかを決定する能力
- 確定したゴールへの行動
- 成果の予測
- 行動に基づく期待
- 社会的なコントロール能力(もし行ってしまったら、社会的に容認できないような結果を引き起こすような衝動を抑制する能力)
実行機能で分かるように前頭前皮質の働きは、思考力や想像力、判断力、記憶力、感情のコントロール、情報を活用して知恵を働かせる能力に関わっています。
なので、前頭前皮質はワーキングメモリの基盤と言え、前頭前皮質の異常は発達障害のADHDなどの実行機能障害と関係します。
記憶を司る「海馬」
海馬とは、大脳の奥深くにある大脳辺縁系のタツノオトシゴ形の脳部位で、脳の記憶や空間学習能力に関わっています。
海馬は、短期記憶した情報を一時的に保管する場所でもあり、短期記憶を生きていくうえで重要なものかどうか振るいにかけ、重要なら長期記憶して保管するという働きがあります。
海馬とワーキングメモリが連携することで、次のようなことができます。
- 長期記憶として保管した情報をすべてふるいにかける。
- あなたが現在おこなう作業にもっとも関係が深い情報を引き出す。
- 蓄積してきた知識と入ってきた情報を結びつけて、新たな情報として長期記憶にくわえる。
また、心理的なストレスを長期間受けると、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌が続いてしまうので、海馬の神経細胞が破壊されて萎縮してしまいます。
うつ病や心的外傷ストレス障害(PTSD)では、その萎縮が確認されています。
脳の感情センター「扁桃体」
扁桃体とは、側頭葉内側の奥にあるアーモンド型の脳部位で、情動反応の処理や記憶に関わっています。
扁桃体の役割は、情動的な出来事に関連付けられる記憶の形成と貯蔵における主要な役割があり、恐怖などの強い感情を感じると扁桃体の働きが活性化します。
そして、記憶する際にはその出来事において感情が強いほど、記憶を強める働きがあります。
ワーキングメモリは、この扁桃体から送られた感情をコントロールして、現在あなたがおこなっている作業から気を散らさないように集中力を維持してくれます。
また、突発的な事件・事故があったとしても、不安や恐怖でパニックを起こさなで冷静に対処することができるようになります。
脳の数学センター「頭頂間溝」
頭頂間溝とは、頭頂葉にある上頭頂小葉と下頭頂小葉の間にある脳溝(脳にある溝)の部分で、数学を司る脳部位です。
頭頂間溝は数学の技能を発揮するうえで欠かせない脳部位で、実際にごく少量の電流を被験者に流して頭頂間溝にアクセスできないようにすると、数字の4は2より大きいかどうかすらもわからなくなります。
もし日常で計算の必要に迫られると、ワーキングメモリが必要な数学の知識を得るために頭頂間溝にアクセスして計算します。
例えば、日常でいろんな選択肢の中から一番割りの良いものを選ぶときや、何かしらの作業に費やす予算や時間などの計算などです。
また、20世紀の天才学者のアインシュタインの脳は、頭頂間溝の下にある下頭頂小葉という領域が、通常の人よりも15%も大きかったそうです。
下頭頂小葉は論理的・空間的神経システムの中枢であるため、ワーキングメモリは論理的思考力や空間把握能力を使って問題解決や創造性を発揮することにも深く関係しています。
言葉を司る「ブローカ野」
ブローカ野は前頭葉の左側にあり、言語処理や音声言語、手話の産出と理解に関わっている脳部位です。
単純には言葉を理解したり、喉、唇、舌などを動かして話し言葉の流暢に発する役割があります。
文章を書くときや、家族や友人、恋人との会話をしているとき、ブローカ野から送られてきた言語情報をワーキングメモリが処理しています。
つまり、ワーキングメモリの強さが言葉を瞬時に理解して機転の効く返しやジョークを言えたり、言葉をつっかえることなく流暢に話せたりするかを決める一つの要因なのです。
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