セロトニンを作る場所は「腸95%・脳5%」でそれぞれ作用も違う
幸せホルモンのセロトニンは、研究により脳内と腸の2箇所で作られることが分かっています。
一般的に知られる心のバランスを保つ働きは脳内のセロトニンで、腸内のセロトニンには異なった作用を持ちます。
そこで脳のセロトニンと腸のセロトニンの働きの違いを紹介していきます。
腸で作れらる95%のセロトニン
1980年代にアメリカのコロンビア大学医学部の解剖生物学教授マイケル・D・ガーション博士が「腸はセカンドブレイン(第2の脳)である」という学説を発表しました。
研究では腸は脳や脊髄の指令がなくても反応を起こせる神経系を持っており、腸の神経細胞は独立したネットワークで他の消化官と協調して働き、他の臓器にも直接指令を出していることが分かりました。
つまり、腸は脳と同じように神経細胞同士で情報伝達をしており、神経細胞が脳に次いで2番目に多いことから「腸はセカンドブレイン」と呼ばれています。
そして、腸の情報伝達に欠かせない神経伝達物質が幸せホルモンとも言われるセロトニンで、体内の95%のセロトニンは腸内で作られることが分かっています。
腸で作られたセロトニンの働き
腸内で作られるセロトニンは腸の働きは、腸以外の消化管、臓器の運動を制御するといった作用を持ちます。
他にも腸内で作られるセロトニンは重要な働きがあり、体内のセロトニンが95%が腸に集中している意味が分かります。
- 消化・吸収など食欲を制御
- 体温の調整
- 痛みの認知
- 蠕動運動(腸)
- 疼痛閾値の調節
- 脳血管の収縮活動の調節
- 止血・血管の収縮作用(血液中の血小板)
特に腸内のセロトニンは、正常に便が排出されるための蠕動運動(=腸内の便を肛門まで運ぶ)に関わっています。
そのため、腸内で作られるセロトニン量が不足すると蠕動運動がされないため便秘の原因となってしまいます。
逆に腸内で過剰にセロトニンが作られると、蠕動運動が活発化し過ぎたために消化不良のまま便が排出されてしまい下痢の原因となります。
女性は男性の52%ぐらいセロトニンの分泌量に差があるため、女性は腸内のセロトニンが不足しがちなので、女性は便秘が多く、男性は下痢が多いのはそのためです。
そして、ストレスや緊張によって「お腹が痛くなってトイレに行きたくなる」といった症状のIBS(過敏性腸症候群)という病気は、腸内のセロトニンが過剰に作られたことが原因と言われています。
脳で作られる5%のセロトニン
脳内でセロトニンを作られる量は全体の5%で、腸内で作られるセロトニン量と比べるとわずかの量です。
また、腸内で作られる95%のセロトニンは脳の関所である血液脳関門(=血中から脳に移動する物質を制御する)の働きで脳内に移動できません。
そのため、腸内セロトニンの合成量が多くても脳内のセロトニンは少ないことがあり、精神が安定しないこともあります。
脳内のセロトニン量を増やすには、セロトニンの原料であるトリプトファンを増やすことと、太陽光を浴びたり、リズム運動をするなどセロトニンを増やすための方法を実践する必要があります。
脳で作られたセロトニンの働き
脳内で作られるセロトニンには、一般的によく知られてる精神のバランスを保って興奮やイライラ、衝動性を抑制する働きを持ちます。
また、セロトニンは睡眠ホルモンのメラトニンの前駆体(=原料)なので、セロトニンが不足してしまうと睡眠障害の原因となったり、慢性的なストレスが解消されないと、うつ病やパニック障害、摂食障害などの原因にもなります。
腸が変われば性格も変わる(腸脳相関)
腸は独立した神経細胞ネットワークがあり、他の臓器と比べて脳との繋がる神経束は約2000本と少ないです。
しかし、脳が緊張や不安、プレッシャーなどのストレスを感じた場合、自律神経を介して大腸に伝わり、便秘や腹痛、下痢を引き起こしますし、うつ病は大腸と自律神経に大きく関与しています。
逆に腸に病原菌が感染した場合は不安感が増すという報告もあり、脳と腸が密接に関係しています。
このように脳と腸は密接に関係しているおり、このことを「腸脳相関」と言われています。
腸脳相関についてのマウスの研究では、臆病な性格のマウスの腸と社交的な性格のマウスの腸を手術で入れ替える実験を行ったところ、マウスの性格が逆に入れ替わるという結果が出ました。
別のマウス実験では、不安が強いマウスに乳酸菌を与えた場合、ストレスホルモンが減り、γアミノ酸(GABA)の受容体が増加したという結果や、腸内細菌を入れ替えることで脳内で作られるセロトニンが増加したという報告もあります。
人間の子供でも、腸内細菌の中に神経伝達物資であるγアミノ酸(GABA)を産生する菌があり、この菌が少ない子供は行動異常や自閉症などになりやすく、腸内環境を改善することで治療が試みられています。
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