回避不能なストレスや苦痛で精神を病む学習性無力感(学習性無気力)とは?
仕事で「精神病になるまでなぜ働くのか?」、ブラック企業に勤めて「なぜ過労死するまで働くか?」、いじめられているのに「なぜ学校に通い続けて自殺を選ぶのか?」と疑問に思ったことはありませんか?
このような人たちは学習性無力感(学習性無気力)になることで、うつ病などの精神病や過労死、自殺まで追い込まれたのかもしれません。
では、ストレスによって精神病や過労死、自殺の原因と考えられる学習性無力感(学習性無気力)とは何なのか紹介していきます。
学習性無力感(学習性無気力)とは?
学習性無力感(=Learned helplessness)とは、長期的に回避できないストレスを与えられる環境に置かれたとき、状況を回避困難だと思い込んでしまい、その状況から逃れようと行動したり、思考しなくなる現象のことです。
この現象から学習性無力感と呼ばれ、別名で学習性絶望感、獲得された無力感、学習性無気力などと呼ばれます。
この学習性無力感は、心理学者のマーティン ・セリグマンらが行った動物実験によって明らかになりました。
後に学習性無力感の発見によって、マーティン・セリグマンはポジティブ心理学を作り、ウィルビーイングを達成のための持続的幸福度を高める研究が続けられています。
回避できないストレスや苦痛で学習性無力感(学習性無気力)になる
先ほど説明した動物実験は、1960年代半ばに心理学者のマーティン ・セリグマンやスティーブ・マイヤー、ブルース・オーバーマイヤーによって行われました。
実験の内容は、窓がない実験室で2匹の犬をケージに入れて、後ろ足に警告なく不規則に同じ間隔で同じ強さの電気ショックを与えるという実験です。
そして、片方の犬だけ鼻先にあるパネルを押すと電気ショックがすぐに終わる細工をして、もう片方には電気ショックを止められないようにしました。
つまり、鼻先にパネルがある片方の犬だけ電気ショックをコントロールでき、ストレスを与えられた時に問題解決できるということです。
犬に与える電気ショックは64回に達すると止めて犬を小屋に戻し、また別の犬を連れてきて同じ手順を繰り返して、実験の1日目は終了です。
翌日に実験再開で、電気ショックを受けた犬たちはシャトルボックスというケージに一頭ずつ入れられます。
このシャトルボックスには、真ん中に犬が飛び越えられる低い壁があり、高い音が鳴った直後に犬がいる床に電流が流れる細工がしてあります。
ここで1日目の実験で電気ショックをコントロールできた犬と何もできなかった犬とで行動の違いが生まれました。
電気ショックをコントロールできた犬は、例外なく音が鳴ると低い壁を飛び越えて安全地帯へ避難しました。
しかし、電気ショックをコントロールできなかった犬は、床に横たわってクンクン鳴き、電気ショックが終わるのを待つだけでした。
つまり、この実験でストレスや苦痛によって無気力になるのではなく、「何をしても意味がない」「苦痛を回避できない」と学習したり、思い込むことで「逃れる努力すらしなくなる」と証明されました。
また、同様の実験を「猫、魚、ネズミ、サル、人間、ゴキブリ」なども、犬と同様に学習性無力感(学習性無気力)になることが分かっています。
楽観主義者(楽観的な人)は学習性無力感に強い
学習性無気力を発見した動物実験には続きがあります。
それは回避できない電気ショックを与えられた2/3の犬は、受け身で無抵抗になったのに対して、残りの1/3の犬は「負けるものか」とへこたれずに苦痛を取り除く方法を試し続けた点です。
人間でも同じような辛い境遇にいるのに、すぐに諦めてしまう人と最後まで諦めずになんとか状況を打開しようと努力し続ける人に分かれます。
このように同じストレスや苦痛を味わっても行動に違いがでるのは、状況の受け止め方が「楽観的に受け止める」か「悲観的に受け止める」かで決まります。
例えば、楽観主義者はストレスや苦痛を一時的なものと考えますが、悲観主義者は永久に続くもので変えられないと考えます。
つまり、楽観主義者(楽観的な人)は学習性無力感に強く、学習性無力感に弱い人は悲観主義者(悲観的な人)で、ストレスや苦痛による精神病や過労死、自殺などのリスクが高まると言えます。
学習性無力感(学習性無気力)の症状
悲観主義者(悲観的な人)は、長期的に回避が困難なストレスや苦痛によって学習性無力感(学習性無気力)になりやすい人です。
例えば、長期に渡って「いじめ(人格否定)」「虐待」が原因で、学習性無力感(学習性無気力)を感じると悲観主義者は次のような症状がでます。
- 「自分が悪いから・自分が無能だから・自分が怠惰だから」と、失敗・挫折・苦痛・不幸の原因を自分の所為だと思い込んでしまい情緒不安定になる。
- 少しだけ努力すれば成功する可能性があっても「努力しても意味がいない」「無駄な努力」と決めつける。
- ストレスを回避するための行動や努力をしなくなる。
- うつ病、不安障害、適応障害など精神病の発症リスクを高める。
学校のいじめや家庭内での虐待、会社でのモラルハラスメント、ブラック企業で過酷な労働を強いられて過労死する人などのニュースを見聞きします。
健常者で正しい判断力がある人なら「なんで助けを求めないのか?」「なんで自殺するまで耐えるのか?」「なんで逃げなかったのか?」と疑問に思います。
しかし、被害者は学習性無力感(学習性無気力)になって、一人ではどうしようもないと思い込んでいるため、このような社会問題は誰か他人の助けが必要です。
学習性無力感(学習性無気力)にならない方法
特に日本は世界的に真面目で我慢強い人が多く、うつ病などの精神病や過労死、自殺が社会で問題視されがちです。
誰でもこのような最悪の事態にはなりたくありませんが、回避できないストレスに晒さる環境で学習性無力感(学習性無気力)になってしまいます。
ポジティブ心理学の研究では、この学習性無力感(学習性無気力)になりにくい性格や防止策が明らかになっています。
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