忘れることにもメリットがある!記憶の忘却の役割
私たちは「忘れることは失敗を意味する」と思い込んでしまうことがあります。
忘れると学校のテストや受験、資格試験などに不合格となりますし、大切な家族や友人との誕生日や約束をど忘れしたり、年を重ねると認知症への不安もあります。
しかし、一方で忘れることにもメリットはあり、記憶の忘却にも役割が存在します。
忘れることはスパムフィルターになる
私たちは忘れることが悪いことだと思ってしまう傾向にありますが、忘れることにも大きなメリットがあります。
その忘れることの大きなメリットとは、記憶を忘却することが非常に精度の高いスパムフィルターとしての機能を果たすことです。
このスパムフィルターの機能のおかげで、余計な情報を忘れて脳は大事なことに集中し、求めている情報を思い浮かべることができます。
忘れることで記憶のノイズを遮断する
私たちは勉強によって覚えなかればいけないことがあり、せっかく覚えた知識を忘れることに不便さを感じます。
しかし、19世紀のアメリカ人の心理学者ウィリアム・ジェームズは、「人間がすべてを思えているとすれば、何一つ覚えていない場合と同様に都合が悪いことがほとんどだ」と言っています。
その記憶を忘れないことで起きる不都合には、「情報の混同」や「情報の遮断ができない」があります。
例えば、アメリカでは子供たちが何万という単語のスペルを記憶して、正確に答えられるか競うスペリング大会があります。
出場する子供たちは、みんな超人的な注意力と知識量を持っています。
しかし、知識量が豊富なことが仇となり、ごく当たり前の情報が遮断します。
このメリットを際立たせるために、スペリング大会の子供たちに、次のような誰にでも答えられる質問をして答えるスピードを競わせる実験を行います。
- 読みたい本のタイトル
- 最後に見た映画
- 最寄りのスーパーの名前
- アメリカ大統領の名前
- 自分のGメールのパスワード
- 歌の歌詞など
すると、難しい単語のスペルはスラスラ出てくる出場者でも、思い出せないことが何度もあります。
つまり、うっかりミスや集中力の欠如のせいではなく、忘却のスパムフィルター機能によって、スペルの邪魔になる情報が意識の表層に出て来ないようにしているのです。
またスペリング大会の子供たちは、珍しい単語を大量に覚えた状態で正しいスペルを答えるので、脳は混同しそうな情報(似ている単語のスペル)を抑圧しています。
私たちの日常的な出来事では、銀行やコンピュータの新しいパスワード設定を例にとるとわかりやすいです。
コンピュータに新しいパスワードを設定する時は、古いパスワードが浮かばないように情報の遮断が必要で、記憶の忘却がないと新旧のパスワードを同時に思い出して混同したり、情報にノイズが混じります。
このように記憶の忘却は不便さを感じますが、忘却によって「情報の混同防止」と「思い出す時のノイズのような妨害情報を遮断する」ことに役立っています。
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