感情って何のためにあるの?人間の根幹を成す4つの感情機能 – 感情心理学
環境や状況の変化によって、人はイライラしたり、悲しんだり、喜んだり、恥ずかしがったりと感情も変化していきます。
感情に振り回されて煩わしく思うこともありますが、人間や動物とって重要な働きがあります。
今回はその感情が持つ4つの機能について紹介していきます。
思考・行動を動機付けをする機能(取捨選択の高速化)
感情には、その思考・行動をとるように本人を動機付けする機能があります。
例えば、「誰もいない道端で、あなたの目の前に突然ナイフを持った男が立ちはだかる」と仮定します。
あなたはどういう思考、行動をとりますか?
こんな状況は普段はあまりないことですが、普通なら「危険な存在から逃げるか(命乞い) or 立ち向かって闘うか」のどちらか選択します。
災害や事故、危険な存在など、自分の身の危険を感じる出来事に遭遇すると、人は恐怖や不安、驚きという感情に支配されて逃走闘争反応(パニック状態)を起こします。
他にも、あなたの生活圏にある環境(学校、会社など)で、とても可愛い・カッコイイ異性が現れたとすると、どうしますか?
おそらくこれも逃げるか闘うかで、何もせずに無関心を装うか、相手のことを知るために話しかけるかです。
このように人間を含む動物は、自分の遺伝子を残すため、遺伝子を維持するため(自分の命を守り生き残ろうとする本能)に、内から湧き上がる感情によって思考や行動を動機づけされています。
ただ、この感情の動機づけする機能には問題もあります。
この感情の機能には、命の危険が迫る時に、理性的に熟考するよりも感情的になって直ちに行動を開始した方が生存の確率を上げられるため、「感情の動機付け機能で物事の精細さ捨て、取捨選択を高速処理する」という特徴があります。
これは原始時代のような危険動物がそこら中にいるような環境では上手く機能したのでしょう。
しかし、現代では理性的に熟考した方が人生が上手くいく可能性が高いです。
たとえば、恋愛について相手以外の周りが見えていないことを「愛は盲目」と言われることがあります。
これは恋愛感情による動機づけされることによって、その人の理性をなくし早く結婚や子供を作らせようとする機能があるためです。
しかし、現代では経済的に不安定な状況にあるのに、何も考えずに結婚や出産すると、望ましい結果を生みません。
学力・記憶力を強化をする機能
あなたは過去を思い出す時、どういった体験・エピソードを思い出しますか。
おそらく淡々とした毎日よりも楽しかったこと、ムカついたこと、悲しかったこと、不安だったこと、恥ずかしかったことなど、ドキドキ・ワクワクした感情的な体験を思い出すでしょう。
そして、もっと過去を振り返るとき、強烈な体験ほどハッキリと記憶していると思います。
これは感情に記憶力を強化する機能があるからです。
怒りや悲しみなどネガティブな感情を抱いた体験については、考えたくもないのに自然に頭に浮び、何度も繰り返し考えてしまうことがあります。
これは感情が、その体験について繰り返して考えること(リハーサル)を強制して、強い記憶として残そうとしているからで、特に戦争やテロ、大災害のような強力な感情を生起する体験は記憶の劣化がなく鮮明に覚えています。
例えば、「9.11」「3.11」という数字の羅列を見るだけで、アメリカの同時多発テロ、東日本大震災のことだと分かるようにです。
また感情には学習効率を高める機能もあります。
例えば、同級生に三国志や戦国時代、スポーツ選手、車、音楽など、膨大なデータをスラスラ言えてしまうといった特定の分野にやたら詳しい人っていましたよね。
こんなことができるのは、その人の好奇心が刺激されたことで、その分野を学ぶことが楽しい、面白いと感じているからです。
そのため、学習では感情に従うこと(好奇心に従うこと)が重要です。
自分を意識をする機能(自己認識をする)
感情には自分自身のことを意識的に考えさせ、自分を知るための手助けをしてくれる機能があります。
例えば、仕事に失敗して同僚や先輩、上司に大きな迷惑がかけてしまった場合に罪悪感を感じます。
その罪悪感のおかげで自分の行動を反省したり、失敗の原因を突き止めて再発防止に努めるようになります。
他にも大勢の前で失態を演じて羞恥心を抱くと、恥ずかしさから同じ失態をしないように、注意深くなったり、努力したりします。
このように「他人の注目や評価」「社会規範」といった「他人の目」があることで生起する感情によって、他人と自分の違いがクローズアップされ、それにより自分の内面に思考が向かい、「自分の行いは正しいのか?」「自分はどうあるべきか?」といったことを考えるようになります。
やがて自分の外見、能力、性格など客観的に捉えて評価したり、将来について考えたり、他人の気持ちが分かるようになります。
他人とコミュニケーションする機能
感情には、他人とコミュニケーションする機能があります。
例えば、怒りの感情は自分が不快感な思いをしたことを他人に伝えるのに、怒りの表情で伝えたり、強い口調で怒鳴ったりして、他人の行動をコントロールしようとします。
悲しみの感情は、今の自分が傷ついてしまったことや助けが必要なことを他人に伝わります。
このように人間は感情的になると非言語コミュニケーション(特に顔の表情や声色)を通して、心の状態や、人格、状況、評価といった情報を周りの人たちに発信し無意識にそれを受け取っています。
なので、他人の非言語コミュニケーション(顔の表情や声色など)を通して、相手が悲しんでいるのか、怒っているのか、喜んでいるのか、という心の状態を読み取ることもできます。
この感情機能によって私たちは他人を理解でき、他人と共感しあって関係を深めていきます。
では、どんな情報を私たちは送受信しているのかというと、心の状態、人格、状況、評価の4つの情報をやり取りしています。
心の状態
怒っているときは、怒りの表情、悲しい時は悲しい表情が顔に現れます。
周りの人はその表情を見て相手の心の状態を理解し、相手が危険な存在か、助けを必要としているかなど瞬時に知ることができます。
人格
常に無表情の人は「得体の知れない」「怖い」という印象を受けますし、逆に表情豊かな人を見ると「良い人かも」と思うかもしれません。
笑い方の違いでも卑屈な笑み、豪快な笑いなどを見るとこの人はどんな人格(性格)なのか推測出来ます。
状況
街中で「キャー」という声と驚き、恐怖の表情で必死に走って逃げる人たちを見たとすると、尋常じゃない事態が起きたのではないかと、状況の緊急性や重要性を理解できます。
評価
友人が冷蔵庫の牛乳のニオイを嗅いで、不快な表情をしていたら、「牛乳が腐っているんだな」と友人の顔を見ただけで分かります。
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