対話形式で分かりやすいアドラー心理学「嫌われる勇気」[著]岸見一郎、古賀史健

2017-04-28アドラー哲学・個人心理学,書評

「嫌われる勇気」の続編である「幸せになる勇気」が発売となりました。これを機に「嫌われる勇気」を読み返してみました。

本著は哲人と青年の対話形式で話が進み、アドラー心理学を深く理解できる良本です。

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と言い切るアドラー心理学ですが、対人関係をいかに解決して、人生を「シンプル」するかという心理学書というよりは哲学書です。

心理学ではなく哲学なのですが、どこか無視できないアドラーの思想は、人間本来の心理と結びついているのかもしれません。

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「与えられたもの」に注目するアドラー心理学の目的論

人生は出発点から不公平だと感じている人も多いはずです。

貧乏でお金がないから、容姿が美しくないから、家庭環境が悪いから、過去のトラウマのせいだと、今の自分が人生に満足できないのは、すべて社会が不公平だからだと。

しかし、自分よりも悪い環境から這い上がって成功を手に入れた人や、幸せを手に入れて暮らしている人もいます。

アドラーは言います。

「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは自分の経験によるショック、いわゆるトラウマに苦しむのではなく、経験の中から目的にかなうものを見つけ出す。

自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである」と。

痛い失敗をしてトラウマを抱えるような出来事に遭遇した時、「この経験が自分を強くたくましくしてくれる」と考えるか、「トラウマのせいで自分はダメになった」と考えるかは、その人の経験に対する主観的な意味付けで大きく違ってきます。

経験に対してネガティブが意味付けをする人は過去の失敗に囚われている人で、また過去と同じ不安や恐怖を味わうことを恐れています。そして、不幸を背負い込んでしまうのでしょう。

ここから変わるには、過去の手痛い失敗など原因に注目するのではなく、「これからどうするか?」と目的に注目して考えると良いと書かれています。

これをアドラー心理学では「目的論」と言うようです。

不幸を嘆いても何も変わらない。

頭を切り替えて、与えられた材料の中からまずできる行動を起こして、自体を好転させようと努力することが建設的な考えです。

「自分自身」が「ライバル」だ!

「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」とアドラー心理学では言い切っています。確かにその通りです。

もしも、世界にひとりだけしか人間が存在しないなら、自分以外に比較する対象がありません。

貧富、容姿、寿命、能力、孤独などの概念自体が存在せず、もはや悩む必要がありません。ただ生きる、好きなことに集中していればいいだけです。

しかし、現実では他人がいない世界などありえません。現代では小さい頃から常に他者と比較されます。比較によって、自分が他人よりも優れている部分と劣っている部分を知ることができます。

健全な人なら自分の長所に注目して、それを伸ばそうと考えますが、中には短所ばかりに注目して、「自分はダメだ!」と自己批判をして自信をなくす人もいます。

こんな心理状態で気をつけないといけないのがアドラー心理学での「劣等コンプレックス」と言われるものです。

哲人:劣等感自体は、別に悪いものではない。中略…劣等感は努力や成長を促すきっかけにもなりうるものです。

たとえば、学歴に劣等感を持っていたとしても、そこから「わたしは学歴が低い。だからこそ、他人の何倍も努力しよう」と決心するのだとしたら、むしろ望ましい話です。

一方劣等コンプレックスとは、自らの劣等感をある種の言い訳に使いはじめた状態のことを指します。具体的には「わたしは学歴が低いから、成功できない」と考える。あるいは「わたしは器量が悪いから、結婚できない」と考える。

また、自分を実際よりも大きく見せようと「過度な自慢」をする人は安直な方法で劣等コンプレックスを隠そうとしています。

これをアドラー心理学で「優越コンプレックス」といいます。

本著の哲人が語っているように、健全な劣等感は努力や成長を促すきっかけとなるので必要なものです。しかし、すべての人が健全でまっすぐな性格はしていません。

自分の生き方に言い訳をしたり、自分を偽り、他人も偽る人もいます。

自分自身が健全に成長していくためには「他者との比較」ではなく「理想の自分との比較」をしないといけません。

つまり、アドラー心理学では今の「自分自身」を「ライバル」として、理想の自分に近ずこうと努力することが望ましいことだと教えてくれます。

世界を「シンプル」にする

哲人:世界はシンプルであり、人生もまたシンプルです。

青年:なぜです? 誰がどう見ても矛盾に満ちた混沌ではありませんか!

哲人:それは「世界」が複雑なのではなく、ひとえに「あなた」が世界を複雑なものとしているのです。

青年:わたしが?

哲人:人は誰しも、客観的な世界に住んでいるのではなく、自らが意味づけをほどこした主観的な世界に住んでいます。あなたが見ている世界は、わたしが見ている世界とは違うし、およそ誰とも共有しえない世界でしょう。

誰でも自分自身の人生を生きています。

なので、他者を自分の思い通りにしようとしても却って反発を受けて、度がすぎると嫌われてしまいます。

例えば、親が子供に勉強しなさいと叱ったり、恋愛で自分の思い通りにしようと束縛をしたりすると、子供は親に反発したり、付き合っている人との関係が壊れる結果を招くことは想像できると思います。

だから、アドラー心理学では「叱ること」「怒ること」「ほめること」「命令すること」などをして他人を自分の思い通りにコントロールしようとしてはいけないとしています。

また、逆に他人がほめてくれるから、評価してくれるからと他人の期待に答えようと、自分の生き方を曲げてはいけません。

哲人:承認されることを願うあまり、他者が抱いた「こんな人であってほしい」という期待をなぞって生きていくことになる。つまり、本当の自分を捨てて、他者の人生を生きることになる。

そして、覚えておいてください。もしもあなたが「他者の期待を満たすために生きているのではない」のだとしたら、他者もまた「あなたの期待を満たすために生きているのではない」のです。

相手が自分の思いとおりに動いてくれなくても、怒ってはいけません。それが当たり前なのです。

アドラー心理学では対人関係の悩みを一気に解消するには「課題の分離」をすることを勧めています。

「課題の分離」とは、人生の課題が誰のものかを考えて、自分の課題と他人の課題を分けることです。

「課題の分離」という考えは、対人関係の悩みから解放してくれ、世界を「シンプル」に見ることができる方法だとわたしは感じました。

みなさんはどうでしょうか?

悩みを抱える人にアドラー心理学「嫌われる勇気」はおすすめ!!

私はこの本を読んで一番心に残った言葉が、上記した哲人の言葉の

「もしもあなたが他者の期待を満たすために生きているのではないのだとしたら、他者もまたあなたの期待を満たすために生きているのではない」

という部分です。

他人に口出しすることが多く他人を自分の思い通りに動かそうとする人も世の中には多いですが、こういうことをすると人間関係は崩壊してしまいます。

私も過去に経験がありますが「嫌われる勇気」を読んで、自分がいかに他人の意志を無視しているかが分かり、反省しなければいけないと思いました。

もしも人生で何か抱えている悩みがあるという人は「嫌われる勇気」を読むことで、何かしらの教訓を得ることができると思います。

本書「嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え」はたくさんの人に是非読んでほしい本です。

続編の「幸せになる勇気」も一緒に読むとアドラー心理学をより深く知る事ができるのでおすすめです!!

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