どんな勉強場所が正解?テストの点数が上がる勉強する環境
テストや資格取得などで勉強することがありますが、あなたの勉強する場所はどこですか?
自分の部屋、リビング、図書館、カフェなど、お気に入りの場所で勉強すると思います。
しかし、勉強する環境と記憶力の実験によると、いつも同じ環境で勉強することは、おすすめできません。
むしろ勉強する環境を変えた方が、テストの点数が上がることがわかっています。
勉強時の環境復元でテストの点数が上がる
1975年のスターリング大学の心理学者のD・R・ゴッデンとA・D・バデリーは、「人は勉強していたときの環境に戻ると、より多くを思い出せる」という仮説の証明をするための実験を行いました。
この実験では、18人のダイバーを集めて、水深6メートルに潜った状態で36の単語を覚えさせました。
その1時間後、ダイバーたちを2つのグループに分けて、一方は陸地で単語の確認テストを行い、もう一方は潜るときの装備をつけさせて水中でテストしました。
その結果、水中でテストを受けたダイバーの方が、陸でテストを受けたダイバーよりも30%多くの単語を思い出すという大きな差が出ました。
つまり、仮説通り「勉強したときの環境が復元された方が、より多く思い出すことができる」ため、テストを受けるときは勉強時の環境をできるだけ再現した方がテストの点数が上がるのです。
例えば、テストの日に着ていく服装で勉強したり、机の上の筆箱の配置を同じにしたり、BGMはペンを走らせている音や時計の音を聞いたりするといいかもしれません。
音楽を聞きながら勉強した方が良い
1985年にテキサスA&M大学で、心理学者のスティーヴン・M・スミスが、心理学入門クラスの54人の学生に40の単語を覚えさせる実験をしました。
この実験では、学生を3グループに分け、Aグループは静寂のなかで、Bグループはジャズを音楽に、Cグループはモーツァルトを音楽に単語を覚えました。
音楽は学生が部屋に入ったときから流れており、それが実験に関係あることは伝えずに単語を10分間覚えてもらい、終了後部屋から出しました。
2日後、学生は予告なしに実験室に再び集められて、覚えた単語を思い出した順に書き出すテストをしました。
このテストでは条件を変えて、Aグループを前と同じ静寂、ジャズの音楽、モーツァルトの音楽の3グループに分けてテストを受けさせ、他のB、Cグループも同様に分けてテストを実施しました。
その結果、暗記とテストで同じ音楽を聞いた学生は、そうでない学生よりも平均で2倍近い単語を思い出しました。
そして意外にも静寂で単語を覚え、静寂でテストを受けた学生が、最もテストの点数が低いという結果でした。
普通なら勉強時とテスト時で同じ環境を復元されるとテストの点数が高くなるはずですが、勉強時とテスト時の両方で静寂だった場合は、これに当てはまりませんでした。
これは静寂のものとで勉強とテストを受けた学生にとって、「音の不在は記憶の復元の手がかりにならない」からで、静寂という環境は、音楽が流れる環境に比べて記憶の復元の材料が乏しいためです。
つまり、静寂よりも音楽を流しながら勉強する方が良いということです。
記憶と思い出しの精神状態は同じが良い
アメリカの学生の間では「賢くなる薬(スマートドラッグ)」が流行しており、最も流行っているものにはアンフェタミン(覚せい剤)を含んでいるようです。
こういう背景があるためか、1970年代の初めから「ドラッグ影響下の学習」についての実験にアメリカ政府がメインスポンサーとして資金が提供されました。
1975年にアメリカ国立精神衛生研究所でジェームズ・エリック・アイクが中心となり、マリファナが記憶の保持に与える影響を調べる実験を行いました。
実験では、30人の大学生や卒業間もない元学生を集めて、半分に本物のマリファナタバコを与えてました。
そして、残りの半分には薬理作用のあるTHC「テトラヒドロカンナビノール」を含まない、見た目も匂いも本物そっくりのマリファナタバコの偽薬を吸ってもらいました。
その後、被験者自身の判断と脈拍、物理的な計測によってハイになった判断したら、被験者は1分半の間に48の単語を覚えさせました。
4時間後、ドラックの影響がなくなると再びマリファナを吸わせて、覚えた単語をできるだけ思い出してもらいました。
この時に最初に本物のマリファナを吸った人たちの半分に本物、残りに偽薬を吸わせ、最初に偽薬のマリファナを吸った人たちも半分に本物、残りに偽薬を吸わせました。
実験の結果、1回目は本物、2回目は偽薬を吸った人より2回とも本物を吸った人の方が40%多く思いだしました。
そして、1回目は偽薬、2回目は本物を吸った人よりも2回とも偽薬を吸った人の方が大差ではないですが、点数が高くなりました。
つまり、記憶にマリファナでハイになるかどうかは関係なく、記憶した時と精神状態になる(脳が同じ状態になったとき)と思い出しが最大限に機能します。
勉強場所を変えると思い出しやすい
1970年代半ばのミシガン大学の心理学者であるスティーブン・スミスとロバート・ビョーク、アーサー・グレンバーグは、同じものを場所を変えて2回覚えたらどうなるか実験を行いました。
実験では集めた学生を2グループに分けて、4文字からなる40の同じ単語を2回学習し、10分の学習時間で覚えて数時間後にもう一度同じ単語を覚えてもらいます。
違う点は場所で、Aグループの半数は地下にある雑然とした小さな部屋で、残りの半数は窓から庭が見えるきれいな会議室で、それぞれ覚えました。
Bグループは1回目は地下にある雑然とした小さな部屋で、2回目は窓から庭が見えるきれいな会議室で覚えました。
つまり、Aグループは2回とも同じ環境で学習し、Bグループは異なる環境で学習します。
3時間後、学生たちに10分の制限時間を与えて覚えた単語をできるだけ書くテストを行いますが、このテストは中立の部屋である普通の教室で実施しました。
この実験の結果、2回とも同じ部屋で勉強したグループは、40単語のうち平均16個思い出したが、勉強部屋が変わったグループは平均24個思い出しました。
つまり、単純に勉強する場所を変えただけで思い出す数が40%以上増え、テストの点数が上がりました。
勉強の手順や環境に変化をつける
先述したように人間は背景情報を手がかりにして記憶を検索しており、背景情報があった方がテストの点数が上がることが実験でわかりました。
背景情報の定義はあいまいですが、気分や動き、音楽、物、他人など、あらゆる変化が含まれています。
逆に言えば物が少ない、人がいない、窓がない、無音の部屋での勉強は、背景情報が乏しいので記憶力が悪くなります。
なので、部屋で勉強するよりも公園や森、いつもと違うカフェ、図書館で勉強しましょう。
また、人生では抜き打ちテストがつきもので、私たちはテストの日程や場所など自分の力を発揮する状況を予測できないので、アドリブで何かをしないといけません。
このような点でも、スポーツや音楽の練習、テストの勉強する場所、時間、手順に変化させることで、取り巻く環境に頼らなくても優れた成果を出すことに繋がります。
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