記憶には「保存の力」と「検索する力」がある!覚えるために忘れる理論(不使用の新理論)
学習の科学では「エビングハウスの忘却理論」や「レミニセンス効果」などの原則があり、この原則から勉強法や学習テクニックが作られます。
そして、2つの理論から導かれたのが「覚えるために忘れる理論(不使用の新理論)」です。
もし、これまでよりも学習効果の高い勉強法を知りたければ、この覚えるために忘れる理論を知ることが早道です。
覚えるために忘れる理論(不使用の新理論)
学習の科学では「エビングハウスの忘却理論」と「レミニセンス効果」という調査実験に基づいた学習の原則があります。
そして、この2つの理論をもとにUCLAのロバート・ビョークと妻のエリザベス・リゴン・ビョークによって導かれた理論が「覚えるために忘れる理論(不使用の新理論)」です。
この覚えるために忘れる理論では、記憶には「保存の力」と「検索する力」の2つの力があるとしています。
そして、優れた勉強法や学習テクニックとは、保存の力と検索する力を伸ばしやすいものだと言えます。
記憶の保存の力
記憶の「保存の力」とは、学んだことを覚えている尺度のことです。
この保存の力は、増えることはあっても減ることはないので、勉強すれば着実に高まっていき、勉強したことを使うことで力が研ぎ澄まされていきます。
例えば、小学校の算数で習う九九の表は、小学校のときに繰り返し勉強してから学生でなくなって社会人となった後でも仕事や私生活のちょっとした計算をするときに活用します。
つまり、九九に対する記憶の保存の力は、繰り返し使うことで強力なものとなり、生涯にわたって忘れることはありません。
ただ保存の力が強化されるのは、役立つこと、関心のあることなど意識的に記憶したことに限り、経験したことの99%以上が記憶から消え去ってしまいます。
記憶の検索する力
昔のことを思い出そうとしても、なかなか思い出すことができないことがありますが、景色や音、匂い、会話などの情報が与えられると、当時の思い出がどんどん蘇ります。
このように脳内の記憶は徐々に消え去ってなくなることはなく、(人生のある時点では有益な情報)一度保存された情報は永遠に頭の中に残ります。
では、記憶が失われたのではないなら、なぜ思い出せなくなるのか。
それは一時的に引き出すことができないだけで、記憶の「検索する力」が低いかゼロに近い状態だからです。
記憶の「検索する力」とは、情報の塊をいかに楽に思い出せるかの尺度です。
検索の力は、学習して使うことで強化されますが容量には限りがあり、力が強くなるのも早いが弱くなるのも早く、不安定な力です。
なので思い出すきっかけやヒントがあれば情報は引きだせますが、情報の重要性が低くなると検索の力も弱くなって思い出すことが難しくなります。
保存の力と検索する力の違いを理解する
同じ記憶に関する保存の力と検索する力の違いを深く理解するには、この力を人間関係に例えると理解しやすくなります。
仮にこれまで会ったことがある人たちが、一堂に出席するパーティを想像してみてください。
このとき、「検索する力は人の名前が浮かぶスピード」で「保存の力はその人との親密さ」に置き換えて考えることができます。
誰でも自分の母親や父親は忘れようがないので、検索の力も保存の力も高いと言えます。
次に10年以上前の学校の先生や職場の同僚など名前は出てこないが顔は見て先生や同僚だとわかる場合がありますが、これは検索の力が低く、保存の力は高い状態です。
逆に新しく知り合ったばかりの同僚など自己紹介されたばかりだと、名前はわかるがその人のことを深く知らないため、検索の力は高く、保存の力が低い状態となります。
そして、何年も前に一度しか会ったことがなく顔も名前も思い出せない人は、検索の力も保存の力も低いです。
「望ましい困難」が学習の力を高める
受験や資格取得を控える人たちにとって優れた勉強法は知りたい情報です。
勉強法にはさまざまな方法論がありますが、学習の科学的には「記憶の保存と検索する力の両方を効果的に高める方法」が優れた勉強法だと言えます。
保存の力は意識的に勉強することで高まりますが、問題は検索の力が時間の経過とともに弱くなることです。
学習の科学の「覚えるために忘れる理論」によると、検索の力は忘れていた事実や記憶を再び見つけたときに、より深い学習を促進されます。
そして、記憶の検索が困難になるほど、その後の検索と保存の力(学習の力)が高くなる「望ましい困難」と言われる原理があります。
つまり、「望ましい困難」の原理を取り入れた勉強法は、効果的に検索と保存の力を高める効果があります。
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