一つに絞る勉強法や運動の練習法は非効率!反復練習がダメな理由
勉強やスポーツの練習など、完璧に覚えるまで、完璧にできるようになるまで反復練習することが大事だと言われることがあります。
実際に一つのことに集中して練習すると少しずつ上達していくので、スキルの向上を実感できます。
しかし、学習の科学では一つのことに集中する反復練習は非効率的で、あまり良い勉強法や運動の練習法とは言えません。
信頼できない反復練習
成功マニュアルや偉業を成し遂げたスポーツ選手や実業家の自伝では、諦めずにできるまで何度も繰り返すことが成功に重要な要素だと言われます。
なのでスポーツのコーチや音楽の講師、学校の教師は、子供たちに何度も同じことを反復練習させますし、子供たちもがむしゃらに頑張ります。
そして、一流のスポーツ選手や音楽家、技術者などになるのに必要な練習時間は、1万時間だと一部の心理学者は主張してます。
ただ100回も200回も反復練習したからといって必ず上達するとは限らず、練習してどんどん上達する人もいれば、全く上達できない人もいます。
これを「才能の差」だと安易に考えてしまいがちで、自分たちの練習方法が間違っているとは考えません。
上達する人は確かに反復する練習量は多く、後で思い出すのもそればかりですが、その練習の過程で取り入れる工夫や修正こそ上達するために重要な要素なのです。
否定された反復練習の効果
1978年にオタワ大学の人間の動きを研究する運動力学の専門家であるロバート・カーとバーナード・ブースは、練習の仕方を変えるとスキルにどのような影響を及ぼすかをしるための実験を行いました。
この実験は、お手玉を的にめがけて投げるという単純なスキルの影響を調べ、実験の被験者にはスポーツジムの運動コースに登録した8歳の子供36人を2グループに分けます。
まず実験は、両グループの子供たちにお手玉を持って膝立ちになり、床に描いてある的を狙って投げさせます。
ただし、この時はアイマスクを装着して目が見えない状態で投げ、投げ終わったらアイマスクをとってお手玉の位置を確認し、それから改めて投げてもらいました。
この1回目の挑戦は両グループとも好成績で終わり、スキルに差はありません。
その後、両グループの子供たちに6回の練習をさせ、1回につき投げるお手玉の数は24個という共通の条件と、それぞれのグループに違う条件をつけます。
Aグループには、1メートル先に的を用意して、それに向かって投げる反復練習。
Bグループには、的を2種類用意し、60センチ離れた的と120センチ離れた的のどちらかを狙って投げる変化を取り入れた練習です。
練習後の最終実技テストでは「1メートル先の的に投げる」というもので、Bグループには不公平なテストです。
テストの結果は、Aグループはテストと同じ距離で練習したのに、テストではほとんどメリットにならずにBグループの方が良い結果でした。
さらに、同じ実験を12歳の子供たちに実施しても結果は同じで、さらに顕著になりました。
カーとブースによれば、「変化を取り入れた練習が運動スキーマの初期形成を促進すると思われる」と報告しており、練習に組み込んだ変化が動きを認識する力を高める役割を果たしています。
つまり、一つのことを集中して行う反復練習よりも変化を取り入れた練習の方が効果的な練習であり、テストや不確定な本番での応用力を高めると言えます。
反復練習で向上するスピードが遅くなる
前述した通り、運動の練習では反復練習よりも変化を取り入れた練習の方が効果的でした。
では、学習においての反復練習ではどうでしょうか?
UCLAのビョークとベル研究所のT・K・ランダウアーは、50の人名一覧を学生に覚えさせる実験を行った。
この実験では、50の名前のうち半分は覚える時間を与えて続けて何度かテストを実施しました。
そして、残りの名前は一度見せただけでテストし、さらにテストの前に別の授業を挟んで、別のことを覚えさせられました。
つまり、半分の名前は純粋に覚えることだけに時間を費やし、残りの半分は途中で邪魔を入れました。
実験の結果、学生たちは邪魔が入った名前のほうを10%前後多く思い出しました。
この新たな検証結果から「一般的にされる反復練習の効果は限定的だ」と結論付けました。
つまり、学習でも反復練習の持続力は弱く、(邪魔が入る)変化がある学習の方が知識が増えると言えます。
そして、技術や知識など一つのことに絞って反復練習を重ねると、知識量が減るので、長い目で見ると学力の向上するスピードが遅くなります。
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