希望を作る心理療法「ABCDE理論(論理療法)」で楽観的になる方法
人生では多くに失敗と挫折を繰り返し経験しますが、そんな時に絶望しないで希望を持つためには、楽観的な思考ができることが重要です。
もし、あなたが悲観主義者(ペシミスト)で、あらゆる物事を悲観的に見る人なら挫折が絶望へと変わり、簡単に心がポッキリ折れてしまいます。
心理療法のABCDE理論は、悲観主義者(ペシミスト)を楽観主義者(オプティミスト)へ変えてくれるものです。
あなたがABCDE理論で思考のバランスを取れるようになることで、辛い出来事や状況でも希望が持るようになり、精神的にも肉体的にも強い人間になることができます。
心理療法「ABCDE理論(論理療法)」とは
ABCDE理論(論理療法)とは、アメリカの臨床心理学者のアルバート・エリス(Albert Ellis)が提唱した心理療法で、理性感情行動療法(REBT:Rational emotive behavior therapy)とも呼ばれます。
このABCDE理論は、心理的問題や生理的反応は出来事や刺激そのものではなく、それをどのように認知したかによって生じるものとして、論理的・合理的思考によって心理に影響を与える心理療法です。
人間は特定の物事への興味や関心、考え、価値観、知識、経験、性格、他人からの批判、教育など、様々な個人差の影響で見たいものを見て、それ以外を意識から外してしまいます。
このように自分のフィルターを通して出来事を見るため、客観的に見ると間違っているけれど、その人にとっては正しいものと思い込んで物事を歪めて非合理的な認識します。
ABCDE理論では、出来事を非合理的な認識を合理的な認識に変えることで、間違った信念や思い込みを正すことで心理的問題や生理的反応を弱めます。
ポジティブ心理学の父であるマーティン・セグリマンによると、大抵の自己改革法は臨床的な知識ばかりでほとんど研究されていないとか。
しかし、ABCDE理論は徹底的に研究されており、すでに数千人の成人の説明スタイルを永久に変えることで、悲観主義者を楽観主義者へ自己改革させることに成功しています。
また、最新のストレス研究でも「人の信念や思い込みがストレスを毒にも薬にもする」という研究結果からも、ABCDE理論は有効な心理療法だと思われます。
(※この記事で紹介するABCDE理論は、ポジティブ心理学で活用されるものなので、アルバート・エリスの心理療法とは若干の違いがあります。)
ABCDE理論の詳細
ABCDE理論では、ある出来事に対して非合理的な信念(イラショナル・ビリーフ)を合理的な信念(ラショナル・ビリーフ)へ変えることが目的です。
その信念を変えるための手順に必要な要素の頭文字をとってABCDE理論と呼ばれており、使用時は各要素に状況を当てはめて考え、紙に書いて自己分析していきます。
また、ABCDE理論は自分の思い込み変える目的でも使えますが、他人からの批判を対処する場合でも使えます。
自問自答して自分の思い込みを変えるABCDE理論
自問自答する場合の手順は次の通りです。
- adversity:困った状況・出来事
- belief:思い込み・信念・固定観念
- consequence:結果
- disputation:反論
- energization:元気づけ
ここで肝心なのはBとDの要素です。
BにはA(出来事)に対して「どのように自分が解釈したのか」を書き、注意点はBには感情と一緒にしないように気をつけて、感情はC(結果)に書きます。
DはB(思い込み)に対して「客観的な反論」をします。
これにより心理的問題や生理的反応に対して気をそらしたり、ごまかしたりして応急処置な方法をとるよりも、ずっと良い根本的な解決をすることができます。
他人からの非難に対処するABCDE理論
日常生活では他人と関わって生活するため、他人と口論したり、議論をかわしたりする機会があり、他人からの否定的な意見や非難に反論することがあります。
そんな時にABCDE理論を部分的に活用することで対処する事ができ、他人からの非難に対処する手順は次の通りです。
- 出来事・問題が起きる。
- 他人からの非難や否定的な意見を言われる。
- 相手の意見に反論する。
- 2と3を納得するまで繰り返す。
他人への非難に反論するには、ABCDE理論の正しく反論する方法を読んでください。
思い込みに正しく反論する方法
自分の非合理的な信念(イラショナル・ビリーフ)に対して反論することで、合理的な信念(ラショナル・ビリーフ)へ変換させる事ができます。
正しく反論するには、次の2つのステップを踏む事が大事です。
ステップ1:一旦、距離をおく
自分の非合理的な信念や他人からの非難に正しく反論するには、まず心理的問題や生理的反応から一旦、距離をおくことです。
例えば、人間関係の問題は日常的に起こることですが、親や恋人、先輩や上司など「他人が自分の事を理解してくれない」と感じることがあると思います。
そこで反応的に「どうして私のことわかってくれないの!」「なんて酷い奴だ!」「本当に思いやりがない」と、精神的な悩みは何も解決しないままです。
そして、さらにその出来事のことを反芻してしまうと非合理的な信念を強化してしまい、反芻することはうつ病の確率を高める原因となります。
人間は他人の非難には、比較的楽に距離をおいて反論できますが、自分自身には「自分がそう思うから、そうに違いない」と思い込んでしまうため、根拠のない思い込みをしがちです。
いちばん大事なことは、自分の信念は思い込みであって事実ではないかもしれないことに気づくことで、正しく反論するには自分の信念から一旦距離をおいて、悲観的な考えを保留する必要があります。
ステップ2:自分に正しく反論する
実際に反論するのですが、正しく反論するには4つの重要なポイントを押さえる必要があります。
- 証拠はあるか?
- 別の考え方はできるか?
- 思い込みが本当だった場合、それはどんな意味を持つか?
- その考え方は有効か?
証拠はあるか?
反論するのに最も効果的な方法は、その思い込みや否定的な考えが正しくない事実である証拠を集めることです。
神経質な人は物事を悲観的、否定的に考えて悩みが絶えないのですが、性格心理学の神経質傾向が強い人が悩んでいる99%が意味のない悩みが占めているという研究結果もあります。
何か問題が起きた時は過剰に悲観的な反応をしてしまう人は、「この思い込みの根拠はあるか」「本当か証拠を集める」ことで、状況がそんなに悪くないことが分かります。
別の考え方はできるか?
問題が起きたときの原因は一つだと考える人もいるかもしれませんが、何事も原因が一つということはめったになく、大抵の出来事には複数個の原因によって起きます。
悲観主義者ほど悪い出来事の原因を「永続的、普遍的、個人的」に考える傾向にあるため、その考えを楽観主義者のように「一時的、特定的、自分の責任でない」という希望が持てる原因を考えてみましょう。
例えば、「成績が悪かったので、私はバカだ」と希望なく考えるのではなく、「勉強不足だった(一時的)」「私は数学は不得意だが他の教科は得意だ(特定的)」「みんなは真面目に勉強したんだな(自分の責任でない)」と、希望が持てるように考えてみましょう。
思い込みが本当だった場合、それはどんな意味を持つか?
反論をするために証拠を集めたとしても、自分の悲観的、否定的な考えが本当であることもあり、思い込みを強化してしまうことがあります。
そんな時は「思い込みが本当でも、それがどういう意味があるのか」「どんな事実が待つか」を自問自答して、破滅的な考え方を取り除きます。
例えば、「目標体重までダイエットを決意して2週間ダイエットしたが、1日だけ誘惑に負けて暴飲暴食をしてしまったのでダイエットを諦めようとしている」としましょう。
1日だけ暴飲暴食をした事実は変わりませんが、それでリバウンドしていないし、2週間ダイエットは頑張った事実は変わらないため、ダイエットを諦める理由になりません。
その考えは役立つか?
人生では自分がコントロールできる問題と、あまりに影響力が大きいため自分ではコントロールできない問題があり、自分ではどうしようもない問題をいつまでもくよくよ考えても意味がないことがあります。
例えば、恋人とケンカをして関係を修復することは今すぐ行動することでできても、社会の不正や不公平さを目にすると悲しくなっても、今すぐに自分がどうにかできる問題ではありません。
もしも、自分よりも影響力が大きい問題を考えてしまうなら、自分に問うべき事は「自分の思い込みは正しいだろうか?」ではなく、「今考えることが自分にとって役立つだろうか?」と考えましょう。
そして、その問いの答えが「NO」で、自分の考えが無効で役立たないものなら「気をそらすか」「将来、状況を変える方法を列挙する」という方法があります。
▼気をそらす
無効な考えを反芻すると、うつ病になる可能性が高まるため、「ストップ!!」と叫んで思考を切り替えて気をそらすことが大事です。
そして、問題を後回しにして「ストップ!このことは後で考えよう。」と自分に言ったり、困ったことをメモして書いておくと、問題をはっきりさせて処理した気分になります。
▼将来、状況を変える方法を列挙する
自分の思い込みが事実で正しいけれど、今考えても問題を解決することができないときは、将来どうすれば状況が変えることができるのかをいくつか考えて見る方法があります。
「どうしたら状況を変えられるだろう?」「状況は変えられるだろうか?」「どうなれば状況が変わるだろうか?」など、未来志向的に自分の思い込みについて考えましょう。
ABCDE理論の具体例
これまでABCDE理論の詳細についてでしたが、それを踏まえて具体的にどのようにしようすれば良いか具体例を紹介します。
自分の思い込みを変える具体例
▼困った状況や出来事:私は新卒採用でこの会社に入社したけれど、数ヶ月経ってもいまだに先輩、上司と打ち解けることができずに会社での人間関係に困っている。
▼思い込み:私は子供の頃から暗い性格なので、周囲に打ち解けることができない。私は話し下手なので気の利いたことも言えないし、ユーモアのセンスもない。先輩や上司の話についていけないのも自分が悪いからだ。だから、私はみんなに好かれないし、仕事の人間関係が下手な私はダメな人間だ。
▼結果:自分にがっかりして、毎日会社に行って仕事することが辛くてしょうがない。あまりに辛いので会社を辞めようと思っている。
▼思い込みの反論
- 私は暗い性格ではなく、単に無口なだけで(別の考え方)だから、会話を弾ませることができれば周囲と打ち解けることができる。(有効な手段)
- 好きなことなら私は進んで話すので、話し下手ではない。(事実・証明)
- 話についていけないからといって自分が悪い訳ではない。(別の考え方)
- 先輩と上司は主に仕事の話が中心(事実・証明)なので、自分が仕事を覚えれば話についていける。(有効な考え方)
- 仕事の人間関係を充実させなくても、プライベートで充実すれば問題ない。(別の考え方)
- みんなに好かれないからとか、人間関係が下手だからという理由で、自分自身がダメ人間と考えるのは間違っている。(この状況の持つ意味)
▼元気づけ:まだ職場に行くのが辛いけれど、これだけで会社を辞めることはない。まず仕事を頑張ることが大事で、先輩と上司に仕事についての質問や相談することで簡単なコミュニケーションを図ろう。
他人との議論での具体例
▼困った状況や出来事:15歳の娘の寝室で服を片付けていた母親が、服の下に隠してあった避妊ピルの箱を見つけた。
▼パートナーからの批判:あの子はまだ15歳なのに、どうしてこうなっていることを知らなかったんだ? あなたが15歳の時は、セックスする子供なんていなかった。 娘が誰かとセックスしていることに気づかないのは、親子関係がうまくいっていないからだ。 よく自分の娘に対して無知でいられるな。 それであの子の親と言えるのか?
▼パートナーに反論する
- 自分が10代の頃と今を比べてもしょうがない。(有効な考え方)
- 時代が変わるのだから今と昔は違う。(別の考え方)
- 確かに自分は娘がこんな状況だとは知らなかったけど、(事実・証拠)それで親子関係が完全に壊れているとは言えない。(この状況の持つ意味)
- 避妊の大切さを話し合ったことで、娘はピルを飲んでいるのだから良い兆候だ。(事実・証拠)
▼パートナーからの批判:あなたは自分の生活で手一杯で、娘に何が起きているのかまるで知らないんじゃない。ダメな親だ。
▼パートナーへ反論する
- 最近は仕事に気を取られていたから、娘にかまってやれなかったかもしれない。(別の考え方)
- でも、今の状況は変える事ができる。(有効な手段)
- この事で自分を責めるよりも、娘とのコミュニケーションを再開するきっかけにして、いろんな事を話し合うことにしよう。(有効な手段)
娘は反抗期で最初は大変かもしれないが、解決できる問題だ。
まとめ
以上がABCDE理論の詳細です。
このABCDE理論は頭だけで考えるのではなく、紙に書いて自分の内面を深く分析しながら活用することで、その人が間違った信念や思い込みを正しい認識に変えることができます。
これで失敗や辛い出来事によって絶望を感じても、楽観的に考えることで希望が持てるようになり、辛い状況を打開する力をあなたに与えてくれます。
また、重要なのは楽観主義者(オプティミスト)になって全てを楽観視することではなく、自分がいる環境や状況に合わせた思考ができるようになることです。
辛い状況でも努力するためには楽観的に、絶対に失敗できない場面では悲観的に思考するというように思考のバランスを取れるようになることにもABCDE理論を活用しましょう。
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