トラウマは存在しない!あらゆる行動には目的がある【目的論】 – アドラー心理学

2021-01-18アドラー哲学・個人心理学

私たちは「物事には原因があって結果が生じる(原因論)」と考えがちです。

生まれ持った環境、貧富の差、教育格差、トラウマなどの過去の体験が原因で、ダメな自分(結果)となってしまったと。

しかし、アドラーは「すべての行動には目的がある(本人も無自覚的な)」(目的論)と言い、原因論を否定しました。

今回は、このようなアドラー心理学の「目的論」について紹介します。

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目的論とは「人は変われる」

オーストリアの精神科医であるジークムント・フロイトは、「人間は過去に蓄積された「性的な力」(リビドー)に突き動かされるのだ」と提唱しました。

つまり、人は過去により規定され、自分で未来の自分自身をコントロールすることはできない、と言っています。

これを「原因論」といい、「何か原因があって結果がある」と考えたフロイトは、カウンセリングにおいて、結果につながった原因(トラウマ)を見つけて取り除くというアプローチをしました。

しかし、アドラーは遺伝や育て方などの原因により行動が規定されないと考え、この原因論を否定しました。

アドラー心理学では、過去の原因ではなく目的を考えます。

このアプローチを「目的論」といい、人は未来への「目的」により行動を自分で決めており、自分の意思でいつでも自分を変えることができると唱えました。

私たちはタイムマシンでもない限り、過去を変えることはできません。

なので、原因論での「過去の原因(トラウマ)」を見つけて取り除くことは不可能であり、なんの解決にもなりません。

でも目的論なら、自分の意思で「目的」を変えて行動を選び直せるので、とてもポジティブに問題解決ができるアプローチです。

トラウマは目的を達成するための手段

アドラー心理学は目的論であるため、過去のトラウマを否定しています。

アドラーはトラウマについて、次のように語っています。

「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。

我々は自分の経験によるショック(トラウマ)に苦しむのではなく、経験の中から目的にかなうものを見つけ出す。

自分の経験によって決定するのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである」

嫌われる勇気よりアルフレッド・アドラー

例えば、過去のいじめが原因でひきこもりになった人がいます。

普通なら「また他人にいじめられる恐怖があるので、部屋から出られなくなってしまった人」と解釈しますが、アドラー的には「外に出ないためにいじめられた過去を利用している」と解釈します。

つまり、その人が部屋に閉じこもるのは過去の恐怖ではなく、「一歩外に出れば自分は誰からも注目されないが、外に出なければ親が心配して丁重に扱ってくれる」という理由から部屋から出ないという手段をとっているのです。

他にも部屋から出ないのは、他人を見ると劣等感に苛まれるから、対人関係が不安だからなど、他人に会わないという目的のためもあるでしょう。

しかし、一方でいじめられた過去のトラウマをバネに努力する人たちも大勢います。

同じ過去のトラウマを抱え、同じトラウマを手段としているのに人生に違いが生まれるのは、アドラーが言うように「トラウマによって今の自分になるのではなく、トラウマに対する解釈が自分を決定している」のだと思います。

人は目的のためなら感情も利用する

アドラーは「感情が人を動かす」のではなく、人は目的のために「感情を利用する」と言いました。(使用の心理学)

生まれたばかりの赤ちゃんは、「おっぱいが欲しい」「おしめの不快感」「淋しいから抱っこして欲しい」ということを、「泣く」という感情表現を使って両親をコントロールして目的を達成します。

そして、これを繰り返すことで「感情を使用する」と目的が達成されることを学習します。

子供ならまだしも厄介なのが、感情だけが目的を達成する唯一の方法ではないのに、大人になってからも感情表現で人を動かそうとする人がいることです。

例えば、自分が気に入らないことがあると他人を恫喝する大人もちらほら見かけます。

これは自分が被害者であり傷ついたことに対して、理想を失い感情的になったから怒ったのではなく、怒りの感情表現で他人を支配しようとしているだけなのです。

悲しみも同じです。

特に他人がいる状況で涙を流す行為は、涙によって同情されたい、注目を集めたいことの現れです。

さらに涙を抗議や復讐のために使用され、「私を泣かせたあなたは酷い人間」ということを周囲に見せつけるために使用されます。

行動を見れば相手の目的が見える

これまでの説明のとおり、人間は自分が達成したい目的のために行動を変えています。

逆を言えば、「行動を見ることで、相手の目的(気持ち)を見る」ことができます。

詳しく説明すると、あらゆる人の行動には「相手」があり、そしてその相手に対してどうのように思われたいかという「目的」があります。

例えば、若い女性が彼との電話で甘えた声で会話をしています。そこに隣の部屋で弟と妹が騒ぎ始めたので、電話を保留にして大声で怒鳴りつけて静かにさせ、また甘えた声で彼と電話を続けるということがあります。

この女性の行動に潜む目的を分析してみましょう。

女性が彼との電話で甘えた声で話すのは、相手にかわいい女の子と思われたいからです。

そして、弟と妹を怒鳴りつけるのは、彼との電話の邪魔されたくないため、保留にしたのは彼に怒鳴り声を聞かせないためという目的が隠れています。

このように、もし相手の目的、相手の気持ちが理解できないことに不安があるのなら、その人が実際に行った行動からある程度の目的を推測することができます。