本人も同僚も上司も被害者に!解雇や失業が健康に与える悪影響
景気後退すると企業のリストラで解雇されたり、退職したりと失業者が増加します。
リストラによる失業は、相当なストレスがあり健康に悪影響をおよぼします。
また失業した本人だけではなく、職場の同僚や解雇した上司にとってもストレスが増加するため、誰も得をしません。
では、実際に解雇や失業が人々の健康に与える悪影響は、どんなものか紹介します。
失業者の健康への悪影響
ニューヨーク州立大学の社会学者ケイト・ストラリーが、解雇が健康におよぼす影響を調べました。
この調査では、健康状態に影響する要素を調節し、健康状態を自己申告のほか医師の診断と症状という質問に答えてもらいます。
すると解雇後に健康状態が悪化する可能性は約83%高まるという結果で、解雇後に職が見つかっても、いくつかの点で健康状態が悪化していることも判明しました。
これに対し、雇用が継続された人の健康状態は安定しています。
1992〜2010年に心筋梗塞を発症した成人1万3000人を対象にした調査では、約70%が期間中に1回以上の解雇を経験していました。
また心臓発作の可能性は解雇の回数に応じて上昇します。
心臓発作を起こす可能性は、解雇されていない人に比べて1回の解雇経験では22%高く、4回以上経験すると63%高くなります。
失業のストレスで過去の悪習に立ち返る
失業のストレスは強く、解雇されていない人より15〜30%もうつ病や不安障害になりやすいと一貫して報告されています。
そして、失業によるストレスを解消するためか、飲酒、薬物の摂取・乱用の発生率が高まることが、さまざまな学術的調査によって裏付けられています。
スウェーデンで男性を対象に行われた調査では、2週間以上失業状態が続くとアルコール摂取量が2倍、深酒をする人が4倍になりました。
また、別の調査では飲酒や薬物摂取歴がある人は、解雇後に薬物乱用リスクが顕著に高まります。
このように失業のストレスを軽減するために、人は過去の不健全な悪習に立ち返りやすくなり、健康悪化に拍車をかけてしまいます。
失業で自殺・死亡リスクが高まる
多くの調査では、解雇は自殺の確率を押し上げることが示されています。
ニュージーランドでの長期の追跡調査では、食肉工場の閉鎖で解雇された1945人と、閉鎖されない近くの食肉工場で働く1767人の労働者を8年間にわたり比較調査をしました。
すると、年齢、性別、人種に関わらず、解雇されると重度の自傷行為におよぶリスクが2.5倍に達し、メンタルの問題で入院する確率が17%高いことがわかりました。
スウェーデンでは、1987〜88年にされた従業員数10人以上のすべての事業所を対象に調査をしました。
その結果、男性は失業して4年間の死亡リスクが44%上昇してました。
また男女問わず、自殺とアルコール依存に起因する死亡数が約2倍でした。
解雇されなくても健康に悪影響がある
解雇は当人だけでなく、自分が解雇されていなくても健康に悪影響をおよぼします。
不況によって人員削減やレイオフのあった職場では、「次は自分ではないか」という恐怖と不安定な雇用がストレスを高めます。
また多くの企業は減らす仕事量以上に多くの人員削減をする傾向にあります。
そのため、解雇を免れた人たちの仕事量は大幅に増加して、疲労と消耗やストレスも増えて健康状態を悪化させます。
1990〜93年のフィンランドでは、景気後退の影響で地方自治体の職員数を12%削減し、国全体の失業率も3%から16%に上昇しました。
この大幅人員削減の影響について、大規模な人員削減された部署と小規模な人員削減された部署の職員を比較調査しました。
すると、大規模に人員削減された部署は小規模な人員削減された部署より、病気欠勤は2倍、喫煙の大幅な増加し、残された人の負荷や雇用不安定感が強まったことが原因だと考えられてます。
また人員削減やレイオフを申し渡す管理職の健康状態も悪化します。
2000〜2003年に410人の管理職に行った調査では、人員削減を経験したマネジャーは、「健康状態が悪化した」「病気を受信した」「眠れない」「仕事を辞めたい」と答えるケースが、あきらかに多い傾向にあります。
そして、その健康状態の悪化の原因に、精神的苦痛を挙げる人が多いという結果でした。
解雇した人の身の危険性が高まる
解雇は当人の健康悪化のリスクだけではありません。
解雇された怨みによって、職場での暴力沙汰のリスクを高め、解雇を申し渡した上司や元同僚を殺してしまう危険性が高まります。
アメリカ疾病管理センターは、1992年に「職場での殺人行為は重大な社会問題あり、年間800人以上が職場で殺害された」と発表。
職場での自殺も不況の始まった2007〜2008年の1年間だけで28%も増加。
また従業員1000人以上の事業所を対象にした調査では、回答者の50%以上が直近1年間で1回以上の職場内暴力に遭遇していました。
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