社会性ある人間として最も重要な知能指数IQ!一般知能「g」とは
日本では残念ながらさほど知られていない知能に一般知能gがあります。
一般知能gは欧米では標準化されて、かつ大規模に調査されており、かなり以前から「人間として最も重要なIQ」として広く知られています。
では、一般知能gとはどう言うものか紹介していきます。
一般知能「g」と特殊知能「s」
一般知能g(単に「gF」「IQg」とも言う)とは、あらゆる知的活動に共通に働く「人間として最も重要な知能」のことを言います。
イギリスの心理学者・統計学者であるチャールズ・エドワード・スピアマン(C.Spearman)が提唱し、1904年に知能検査について調査して、統計的に解析することで、すべての知的作業が2つの因子からなることを発見しました。
その2つの因子とは、ある知的作業に固有の特殊因子「s」と、あらゆる作業に共通する一般因子「g」です。
「g」は多くの知能を貫いて存在する知能で、「s」よりも階層的に高次の知能で、多重知能の各知能(音楽知能、運動知能、言語知能など)がsに相当します。
簡単なイメージとしては、スマホのAndroidやiOSが「g」で、アプリが「s」みたいなものです。
また、一般知能gが人間として最も重要な知能と言われるのは、一般知能gが「社会性」「人間らしさ」や「人生の成功」に影響するからです。
社会生活ではIQよりも一般知能gが重要
gは高次知能ということもあって、gを伸ばせば低次の知能sも伸びますが逆はありません。
なので、特殊な知能sである言語知能、音楽知能、運動知能、IQなどがいくら高くても、一般知能gが高いとは限りません。
実際に普通のIQが高くてもgが低い人はおり、そうした人は社会生活がとても困難です。
事故で一般知能gに関係する前頭前野に軽いダメージを負い、普通のIQは120もあるのに、gは6歳の幼稚園並み(偏差値25)になった女性(23)を調べた研究によると、いかに社会生活が困難になるかわかります。
この女性は普通のIQが高いので、事故後も勉強が好きで通信制大学で単位をとったりしていました。
しかし、女性がレストランでウェイトレスのアルバイトをしていたときに問題が起きました。
そのとき、店は終わりかけで店の人から「麺が切れたので麺物のオーダーはとらないでくれ」と言われて、かつ彼女は「麺物のオーダーはとってはいけないとちゃんと理解していた」のに、何度も麺物のオーダーを受けて、店の人に怒られていました。
これは前頭前野障害の典型的な症状である固執傾向のひとつで、「間違いしていることを理解しても間違いを繰り返してしまう」のです。
彼女はこうしたことが頻繁にしてしまうので、その店をクビになりましたし、その後も同様の理由で仕事は続きませんでした。
一般知能gと人生の成功・失敗との関係
アメリカの知能学者たちは、gと人生の成功度の関係を大規模に調査し、1998年にゴットフレンドソン(L.S.Gottfredson)がその成果をまとめています。
その論文によるがgは統計的にかなり明確に「人生の成功・失敗」と相関することが判明し、具体的なgの数値と関係は次のとおりです。
- 75以下 = リスク大
- 75〜90 = 厳しい
- 90〜110 = 現状維持
- 110〜125 = 前途洋々
- 125以上 = 成功間違いなし
この人生の成功度は、次のような様々な指標から推定しています。
- 仕事が1ヶ月以上続かない(男性)
- 年に1ヶ月以上の失業状態(男性)
- 5年以内の離婚
- 望まない妊娠をして子供を産む(女性)
- 貧困の中での生活
- 入獄の経験あり(男性)
- 社会保障を受けないと自活できない
- 高校中退
この指標とgは統計的な有意な関係があることが判明しています。
なので、これらのどの指標に関しても、gが低いと、そうである比率が高くなります。
例えば、「貧困の中での生活」や「社会保障を受けないと自活できない」と言う事態になる確率は、gの数値が90以下だとおよそ20〜30%で、110以上だと数%になり、社会保障だけに関するなら125以上だと0%でした。
高校中退に関しては非常に明確で、gの数値が110〜125の人は0.4%、125以上の人は0%で、75〜90の人たちは30%以上で、75以下の人たちに至っては半数以上の55%が高校を中退していました。
さらに勉強ができる人たちはちゃんと進学し、大学も卒業して高給取りになりやすいです。
アメリカの成功していると思われる医者や弁護士、企業の重役、成功した起業家など600人ほどを調査すると、ひとりの例外もなくgの数値が110以上でした。
他にも一般知能gが高いと学業成績が良く、交通事故死の少なく、健康管理が上手で、病気になりにくく長生きし、さらに幸福な家庭や会社などの組織での地位、地域社会などでの評価を受けるようになります。
一般知能gを測定する知能テスト
一般知能gを測定する知能テストは、次のようなものがいくつか存在しています。
- CFIT(Culture Fair Intelligence Test)
- RPM(Raven’s Progressive Matrices)成人でよく使われる
- WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)成人用のIQテスト
- WISC(Wechsler Intelligence Scale for Children)6歳から16歳用のIQテスト
中でも、アメリカのイリノイ大学の教授であるキャッテル(R.B.Cattell)が開発したCFITが、幼児向きテストを含むため、かなり広範囲に使われているようです。
IQテストであるWAISやWISCでのfull-scale IQも「g」にやや近いのですが、CFITの方がgをかなり使います。
そのため、gを測定する上ではWAISやWISCよりもCFITの方が優れています。
一般知能gを伸ばすポイントは「ワーキングメモリ」
一般知能gは、多様な知能、多重知能の上位に位置する高度な知能です。
また、gは様々な認知機能の中核となる能力があるため、一般認知能力(general cognitive ability)とも呼ばれます。
gが一般認知機能の能力であるなら他の認知機能や知能と同様にgを担う脳内システムもあり、2000年頃に脳イメージング研究でgのセンターが前頭前野にあることが判明しました。
そして、gは前頭前野の中でも中心的な領野である46野であり、これはワーキングメモリと同じ領野です。
ワーキングメモリは様々な認知機能に決定的に重要な基礎となるもので、人間関係や教育、自制心などに影響しており、人間らしさを作っています。
なので、教育や自主的に一般知能gを伸ばす場合、ワーキングメモリを鍛えることで認知機能を高める効果があります。
ワーキングメモリについて詳しく知りたい方は次のリンクへどうぞ!
【強いワーキングメモリの効果まとめ】【脳科学】強いワーキングメモリの効果 | 人生の成功や幸せ、学習能力、スポーツに影響
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